経緯

2013年に採択された「地(知)の拠点整備事業(COC事業)採択を機に、自治体との連携による社会課題解決と研究成果の社会実装に向けた実践的研究活動の展開支援を進めてきた。その結果、金沢大学の人間社会、理工、医薬保健の3研究域を横断した異分野融合研究会の組成、定期的な学内勉強会の開催、のべ数100回を超える教員・自治体関係者との意見交換、学際連携チームによる外部資金申請・獲得、共同研究の受入れなど、確実な成果を上げた。

2017年度にCOC事業が終了するが、本活動で得られた学内外の人的ネットワークや連携体制の維持・発展は、本学における今後の研究推進や社会貢献が大きく期待される。とくに、大学の掲げる将来構想の中期計画では、「日本海側に位置する世界に誇るイノベーション拠点として、研究成果の社会実装を目指し、社会・経済的なニーズと本学の研究・技術シーズとのマッチングにより、自動運転システムや健康管理システム等の技術創出に関する自治体、企業等との産学官連携プロジェクトを展開する」としており、まさにこれまでの活動成果を発揮する必要性を示している。そこで、2018年度から本学先端科学・イノベーション推進機構(現:先端科学・社会共創推進機構)内に、異分野融合研究推進を通じて研究拠点形成を目指す「共創型研究支援プロジェクト」を創設した。

これまでの取り組み実績

2011年に閣議決定された科学技術基本計画について、国は、「科学技術イノベーション政策のための科学」を推進し、客観的根拠(エビデンス)に基づく政策の企画立案、その評価及び検証結果の政策への反映を進めるとともに、政策の前提条件を評価し、それを政策の企画立案等に反映するプロセスを確立する。その際、自然科学の研究者はもとより、広く人文社会科学の研究者の参画を得て、これらの取組を通じ、政策形成に携わる人材の養成を進める。」としている。このことから、「科学的根拠に基づいた政策立案」をキーワードに行政データ・行政施策と一体的な異分野融合研究展開支援を推進し、研究域を横断するボトムアップ型の異分野融合研究展開を支援してきた。具体例としては、「地域包括ケアとエリアマネジメント」、「庁内横断ビッグデータの活用」、「総合型の都市・河川防災」などの異分野融合テーマの設定と定期研究会の立ち上げ支援を行い、立ち上げ後も研究活動支援を継続中である。また、2014~2016年度で29件の外部資金を獲得した。特に、本学と自治体との共同研究契約については、本事業採択前の2013年度は1件のみであったが、2016年度には11件と大幅に増加し、そのうち9件が事業での支援によるものであった。また、2017年9月には、本学、羽咋市、日本電気株式会社(NEC)による三者研究協定を締結するなど、研究成果の社会実装に向け、産業界も含めた実践的な研究活動に発展しつつある。

今後の取り組み

2017年度にCOC事業が終了後は、本学先端科学・イノベーション推進機構(現:先端科学・社会共創推進機構)内に、異分野融合研究推進を通じて研究与点形成を目指す、「共創型研究支援プロジェクト」を創設し、これまでの活動で得られた学内外の人的ネットワークや連携体制の維持・発展に注力する予定である。とくに、国や地方自治体などの行政・研究機関・産業界と、研究成果の社会実装に向けた連携をさらに強化していくことで、価値創造に繋がる研究の企画・実践を進め、連携自治体等地域社会の要求に応えつつ、学問的にも高い水準を満たす社会システムイノベーションの研究拠点の形成を目指す。