自治体の声

Vol.1 (2018.11)

・中島 一明 氏 
(羽咋市 総務部 
羽咋市まち・ひと・しごと創生本部事務局事務局長補佐
兼 がんばる羽咋創生推進室長補佐
兼 企画財政課長補佐 )

石川県羽咋市は、能登半島の入口に位置する人口21,974人(平成30年4月1日現在)、面積81.85㎡のコンパクトな小規模都市であり、日本で唯一、普通の車で走ることのできる砂浜「千里浜なぎさドライブウェイ」等の豊かな自然環境、県内では金沢市に次いで2番目に重要文化財(建造物)が多く存在する歴史と伝統文化が香る地域であります。

全国の地方同様、当市においても、人口急減・超高齢化社会への対応は喫緊の課題であり、早急な対応が必要となっています。このため、当市では、国が掲げる「地方創生」に呼応し、平成27年10月に地方版総合戦略「がんばる羽咋創生総合戦略」を策定、地域経済の好循環と持続可能なまちづくりを目指しています。この戦略策定に際し、様々な点でご支援とご協力をいただいたのが、金沢大学の高山先生及び平子先生であり、私との最初の出会いとなりました。

当市の重点施策は、豊かな自然環境の保護と次世代への継承、耕作放棄地や荒廃地の活用、就農者の移住・定住の推進と所得の安定化を図るため、無農薬・無化学肥料等による農作物栽培方法「自然栽培」を中心とした農業の6次産業化や平成29年7月に開業した「道の駅のと千里浜」を核とした地域産業の活性化と交流人口の拡大、地域における支えあいの場と仕組みづくりと健康寿命の延伸などであり、それぞれの事業の根幹的かつ基礎的な部分について、金沢大学の専門的な知見と科学的な分析能力を生かした共同研究を平成27年度から実施いたしております。

この継続的な共同研究の実施により、当市の重点事業の信頼性と実効性が確保されることにつながり、羽咋創生がさらなる拡大と加速ができるものと考えております。また、共同研究の取組により、各課横断的な取組が推進されたことは、当市にとって大変有効であったと考えています。

順調に共同研究を進めるためには、行政(地方自治体)側としては、客観的なデータに基づく施策立案とPDCAサイクルの構築といった意識改革が重要であるとともに、大学は研究主体の観点だけでなく、いかに地域住民のアウトカムに寄与できるかの視点と認識が必要であると思います。これらを行政と大学で情報を共有するとともに、双方の現状や状況を理解した意見交換を行う場と尊重できる人間関係の構築が必要であると思います。私も平子先生とよく熱い討論をおこないましたが(笑)。

持続可能な地域づくりを実現するためには、行政及び大学がそれぞれの分野や領域を踏まえ、それぞれの強みを生かし、広義の意味での地域における多様性、包括性、持続性を踏まえた創造、いわゆる「共創共生社会の構築」が今後必要であると考えています。

また、当市の総合戦略のさらなる深化・発展には、庁内データや各種統計データなどのビッグデータの有機的な結合と活用は、今後の政策立案や意思決定の重要要因となること、実証実験を通じた地域の実情把握と特性認識は必要要因となることから、日本電気株式会社(NEC)が当市の総合戦略に参画していただけることは、心強いパートナーとなると思っております。

今後も産官学が連携を深めることが、共創共生社会の構築を高めると感じており、様々な機会や場づくりを通じて、関係強化を促進し、市民福祉の向上とまちづくりを進めていきます。

研究者の目


Vol.1 (2018.11)

・佐無田 光 氏
(人間社会研究域 経済学経営学系 教授
  共創型研究支援プロジェクト 副委員長)


地域と大学と企業が連携して進める「共創型研究」を推進しています。理工・医薬・人社の領域を横断して異分野の専門家が集まり、社会課題の解決のために知恵を出し合い、対象を科学的に分析しつつ、政策・事業の現場とフィードバックを重ねながら、その成果を実践的に地域の課題解決につなげていこうとする研究プロジェクトです。金沢大学では、共創型研究の先行モデルの1つとして「地域包括ケアとエリアマネジメント」研究会を組織して、成果を上げてきました。このような地域と一体となって歩む新しいタイプの研究連携は、領域を超えた知の邂逅を生み、研究と社会実装のプラットフォームとなっていくことが期待されます。

コラム(『NEWS』より)


定期刊行物『NEWS』